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眠りについて知ろう

運動習慣と快眠

 9月になると夏の猛暑も少しはやわらぎ、明るい時間帯に運動もできるようになってきます。運動習慣は、運動機能や活動能力の向上、肥満、高血圧、糖尿病、骨そしょう症、高齢者のサルコペニア(加齢や疾患により筋肉量が減少し身体機能の低下が起こること)等の生活習慣病の予防や心身の健康増進とともに、睡眠の改善とも密接に結びついています。いわゆる体温には、腋窩などで測る表面温度と内蔵などの躯幹部の深部体温(以下体温とします)があります。私たち人間の体温は、生体リズムの働きで、夜には体温が下がり昼には体温が上昇する、1~2℃の幅をもった日内変動が見られます。徹夜などで、朝方に寒気や眠気を感じる時間帯は運動能力が最も低く、夜間の交通事故や作業中のヒューマンエラーのピークの時間帯です。逆の面からみれば、深部体温がしっかり低下し運動機能も下がっている時間帯が、グッスリ眠れる時期なのです。深部体温の変動幅が大きくメリハリのある人ほど、夜にグッスリ眠れている傾向があります。家事などの軽作業も含め、運動習慣を持つ人の深部体温変動には、メリハリのあることが知られています。運動には、深部体温を上げメリハリを作る働きがあるのです。しかし一方で、どの時間帯の運動でも快眠につながる訳ではありません。朝方の運動は、夜間の睡眠への直接的な影響はあまり見られないと考えられています。さらに、高血圧症などの循環器系に問題のある人は、起床3時間後までが、突然死のピークなので、起床直後の激しい運動は禁物です。過激な運動も筋損傷の影響で、その夜の睡眠を悪化させます。また、就寝2時間以内の深部体温が0.5℃以上も上昇するような運動は、寝つきを遅らせる可能性があります。適切な時間帯に、適度な運動を行うことの方が、深部体温にメリハリをつけ、快眠につながるのです。さらに、習慣化も快眠には大切なことがわかっています。

 深部体温と運動との関係、深部体温と睡眠との関係についてもう少し詳しくお話ししましょう。私たち人間は恒温動物です。外気の温度に左右されずに、ほぼ一定の深部体温を保っていられるのが恒温動物です。変温動物は、自分自身の働きで深部体温を一定に保つことができません。トカゲの仲間であるガラパゴス諸島の海イグアナの活動をTVで見たことがある読者もいるでしょう。朝に太陽が昇ると一斉に体を日にさらし、太陽の熱で深部体温を上昇させ、その後で活発に活動できるようになります。人間は、大きく熱産生系、熱放散系、行動性調節系の3つの系で深部体温を調節しています。熱産生系の大多数は筋肉です。行動性調節系は、暑い時に日陰に入ったり、寒い時に厚着をしたり、など行動によって深部体温を調節しようとする系です。睡眠中の寝返りも、寝具の中の温湿度(寝床内気候)が暑すぎたり湿度がを高すぎると、無意識で寝返りをして寝具内の温湿度を調節する行動性調節系です。人間の熱放散系は、皮膚からの放熱と発汗による気化熱で体の中の熱を外部に放散します。運動により筋肉が収縮すると熱を産生します。昼間の適切な時期に、運動により熱を産生し体に蓄積していれば、夜にはその熱を放散するために体温がしっかりと下がるように、私たちの体はできています。すなわち、体温の変動にメリハリをつけるためには、適切な時間帯に適度の運動をすればよいのです。

 可能であれば、週に3日以上、運動する日を作ることから始めましょう。運動は有酸素運動で、ウォーキングのような適度な運動負荷のものを選び、30分程度で十分です。夕方の体温が高い時間帯で、夏は涼しくなった頃が快眠を得るための運動には最適です。夕方の運動は、睡眠中の体温低下を促し、安定した睡眠と交感神経(自律神経)の休息による起床時のリフレッシュ感とともに快眠をもたらします。

文章:睡眠評価研究機構代表 白川修一郎先生

日本睡眠学会 Japanise Society Of Sleep Research
JOBS 一般社団法人 日本睡眠改善協議会