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眠りについて知ろう

夏の睡眠環境対策

 熱帯夜が増える夏になると、寝室の環境対策の取材が多くなります。これまでは7~8月がメインでした。気象庁の2018年の気温の変化を調べてみると、東京で6月後半から熱帯夜が頻発し始めています。地球の温暖化や都市部の路面が舗装されたことによるヒートアイランド現象の影響かもしれません。そこで少し早めですが、夏に快眠できるための睡眠環境対策を記事にしておくことにしました。

 日本の夏は寝苦しい夜が多いのですが、なぜ眠りにくいのでしょうか。その原因は、睡眠科学が明らかにしています。人間の睡眠には、躯幹(深部)の体温が下降し一定の温度以下にならないと眠つきにくいという特徴があります。また、躯幹温が高いままだと中途覚醒や浅い睡眠が増えて、グッスリ眠れないということも知られています。餌を得にくい時間帯にエネルギーを出来るだけ使わないために、進化の過程で獲得した特性が、睡眠本来の役割と考えられています。躯幹の体温を下げることでエネルギー代謝を低下させ、目覚めた後の活動のためにエネルギーを保存するという役割が、睡眠にはあるのです。人間の場合、体温を下げる方法は主に二つです。30℃前後の皮膚の表面から熱をより低い温度の外部に放散し、その結果として躯幹の体温を下げるメカニズムが一つ目。汗をかくことで、その気化熱を利用して躯幹温を下げるのが二つ目です。皮膚表面からの熱が放散しにくい高温の環境、汗が気化しにくい多湿の環境では躯幹温が下がらず眠りにくいのです。夏の快適な睡眠のための環境づくりは、暑熱多湿対策が、まずは第一です。

 現代の日本の家屋の多くは冬向きに作られています。都市部では窓を開けても風が通らない寝室も多く、防犯の問題で窓を開けたままで眠ることはお勧めできません。エアコンを使用せざるを得ないのです。夏に心地よく眠りにつくためには、湿度が60%くらい、室温は26~28℃前後、このくらいの状態がよいようです。湿度が80%を超えると室温が26℃くらいでも、寝苦しく感じることもあります。就寝30分前からは、涼しいと感じられる設定温度でエアコンを使用しましょう。エアコンは持続的に動かし続けた方が電気使用量は少ないのです。最低でも3~4時間程度は動かしておくとよいでしょう。寝つきの良さと眠った後の3時間の熟眠が、快適な睡眠と感じさせるポイントの一つです。また、夏は午前5時を過ぎると日光が入ってきますし、人間も朝早くから活動し始め騒音も多くなります。寝室を遮光し、朝5時頃からエアコンが入るように予約しておけば、心地よい朝寝が楽しめるでしょう。高齢者や体の具合の悪い方は、枕元に温湿度計を置いて、温度29℃以上あるいは27~28℃でも湿度が70%以上の夜はエアコンをしっかり使いましょう。睡眠中は、体温調節機能が十分には働かず、水分補給もできないので熱中症になりやすいのです。密閉性の高いマンションなどでは、空気の流れがなくベッド周りに熱溜りができてしまうことがあります。これでは、エアコンを適切に使用しても快適に眠ることができません。扇風機などを併用して空気の流れをつくると熱溜りは解消できます。ただし、エアコンや扇風機の風が、直接身体にあたらないように注意しましょう。

 夏の寝室は、北向きで風通しの良い部屋が最適です。部屋に余裕のある人は、夏の寝室と冬の寝室を別にしてみてはどうでしょうか。直射日光が差し込む寝室は、日中に熱がたまりやすい欠点があります。窓に断熱フィルムを張る、窓の外にすだれを掛ける、緑のカーテンを作るなどの対策が効果的です。寝室への昼間の熱を遮断しておけば、夜には少し涼しくなります。

 頭寒足熱という眠りにちなんだ言葉がありますが、夏は頭寒足寒を心がけましょう。冷え性の人は、夏は火照ってということも多いようです。気持ちよく寝つくためには、足の火照りをさます工夫を、しっかりと眠るためには、脳温を下げる工夫が必要です。冷却ジェルをタオルで巻いて、頭と足元を冷やすなどの工夫も効果的です。しかし、一晩中頭を冷やすと起きたときの頭痛の原因になりますので要注意です。

 夏は寝具にも注意しましょう。冬の枕は首と肩を保温する役割ですが、夏の枕には、後頭部からの汗を吸収し、頭を涼しくする役割が求められます。比熱が低く通気性がよく吸湿性と放湿性のよい素材の枕が望ましいのです。また、ダニの発生を抑えるために丸洗いできるものがよいでしょう。敷寝具は、布団よりもベッドの方が通気性は良好で、ベッドパッドとシーツを比熱が低く吸湿・放湿性のよい麻などの素材のものを使用すると、より心地よく眠れます。布団を使用する場合は、布団の下に簀の子や籐などのラグを敷いて通気を確保すれば、体と布団の接触面の湿度を下げることができ不快感が軽減できます。夏には裸で眠る人もいますが、パジャマを着用した方が汗を気化する面積が増え躯幹温を下げやすいのです。洗濯も容易で、汗や皮脂などによるシーツの汚れを減らすことができます。夏は睡眠中に相当量の汗(成人で350~500cc程度)をかきダニの発生も多いので、寝装具はこまめに清掃・洗濯しましょう。

 夏に適切な睡眠をとれない状態が長く続くと、睡眠負債や暑熱ストレスに体が負けてしまい、夏の終わりに体調をくずす原因になります。夏こそ、睡眠環境の対策が最も必要な時期なのです。

文章:睡眠評価研究機構代表 白川修一郎先生

日本睡眠学会 Japanise Society Of Sleep Research
JOBS 一般社団法人 日本睡眠改善協議会