私たちの生理現象の多くは、25時間くらい(個人差がある)の周期で変動しているサーカディアンリズム(生体リズムの一種で、1日のリズムのこと)に依存していますが、それらの生理現象は複数の生体時計によって動いており、生活時間や太陽の光といった外的要因によって24時間に調整されています。そのため、一気に生活時間がズレるとサーカディアンリズムが乱れるばかりか、生体時計の種類によってズレ方が異なるために、それぞれの生理現象が起こるピークの時間帯がバラバラになるため体の機能が低下して不調が起こりやすくなるのです。
日数が経つと生体リズムは次第に現地の生活時間に同調していくため、時差ボケ症状は解消されていきますが、それにかかる日数には個人差があり、加齢とともに同調機能は低下するといわれています。一般に、若年者では自律神経系、睡眠とも約1週間、高齢者では自律神経系の再同調は1週間、睡眠は10日を必要とするといわれ、サーカディアンリズムを後退させる(1日のリズムを長くする)必要のある西行き旅行より、前進させる東行き旅行のほうが時差の症状は重くなる傾向があります。
また、普段、規則正しい生活をしている人ほど、時計のズレをはっきり感じやすいため、時差ボケ症状を感じやすいようです。そういうと、不規則な生活をしている人のほうが適応能力があり、海外旅行に向いているように思われがちですが、そうではありません。規則正しい生活を送っている人は、普段は時計が正しく動いていると考えられます。そのため、時差ボケは感じるものの、同調すれば睡眠の質も体の機能も高い状態が保たれやすいといえます。しかし、不規則な生活を送っている人は、時計が乱れることが多いため、国内にいても時差ボケに近い状態にあるため、海外に行っても気づかないというのが実態。日本にいても海外にいても眠りの質、体の機能とも低下しやすい状態にあるため、健康の面からいえば、よくないのです。
2.東への旅行はサーカディアンリズムを前進させる
東へ旅行する際には、サーカディアンリズムを前進させる必要があります。そのためには、起床直後から30分程度外光を浴びること。サーカディアンリズムが1~2時間前進できるといわれています。また、昼食・夕食の時刻を前進させることも代謝のリズムを前進させるのに有効だといわれているので、食事時刻も早めにしましょう。2日目もお昼まで寝るようなことはせず、朝は早めの時刻に起きて光を浴び、サーカディアンリズムを前進させて。眠気が強い場合は午後2時前後に30分程度の仮眠をとるようにしましょう。
3.西への旅行はサーカディアンリズムを後退させる
西への旅行は、就寝時刻と起床時刻を遅くして、サーカディアンリズムを後退させましょう。そのためには夜になってからも2,500ルクス以上の明るい光を浴びることが有効です。ただ、入眠を妨げてしまうことがあるので、就寝直前は避け、夕食後などに光を浴びるようにしてみましょう。
朝到着の便になってしまった人は、飛行機の中ではなるべく眠っておきましょう。眠れなかった場合でも、現地についたら眠らずに、日中はなるべく明るい場所で過ごすこと。どうしても眠たい場合は、現地時間の午後2時前後に30分程度の軽い仮眠をとりましょう。寝すぎたり、夕方遅くに寝てしまうと夜になっても眠れなくなり、一層時差ボケがひどくなってしまうので注意して。
時差ぼけをひどくしないためには、出発前から少しずつサーカディアンリズムを調整することが理想で、日本に帰った後も行きとは逆の方法でサーカディアンリズムを再同調させることが必要になります。1~2時間の調整でも、数日は必要だといわれているので、数日間は調整する生活をしっかりと続けること。また、時差ボケ症状は1日目にでやすく、ミスも起こりやすくなるので、車の運転はもちろん、スキューバなどをする人は十分に注意を! 時差ボケがひどい場合は、メラトニン剤や短時間睡眠薬などを使った方法もあるので、その場合は専門医に相談を。